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わたしにとって、整体施術の醍醐味とは

 

昨日は樟葉(くずは、大阪府枚方市)での施術日でした。10時から16時まで、6名の方に施術をさせていただきました。

 

出張施術の日は一日に何名もの方とのセッションをさせていただくのですが、セッションを終えて帰路に着くたびに思うことがあります。それは、わたしは本当に施術が好きだなあということです。今日は毎回感じるこの感覚を、自分なりに紐解いてみたいと思います。

 

わたしの整体業の営み方は、自分の整体院を構えて毎日そこにいる、というスタイルではなく、場所を借りたり訪問施術をしたりするやり方です。暮らし(生計)も整体業一本ではなく、住まいしている月ヶ瀬でのしごと(農業や地域のこと)と半々で成り立たせるイメージを持っています。半農半Xという表現を借りれば、半農半整体といったところです。

 

ところでわたしのお金を稼ぐことに対する考え方についてですが、現時点では、暮らせればいい、という感覚でいます。かつてサラリーマンだった時代は、なるべくお金を使わないようにしていたし、老後のためにいくら貯めておかないといけないのだろうと心配もしていました。

 

その後、脱サラ就農して自分で食べものを作れるようになり、お金が無くても生きていける!と思ったら、ぱぁっと世界が開かれたような、楽しい感覚になりました。でも、出産をきっかけに畑を離れ自分で食べものを作れなくなったら、またお金への不安が戻ってきました。子どもが生まれてしばらくすると、養育費にいくらかかるのだろう、今の我が家の状況ではこの先到底暮らしていけないのではないかとか、再び不安が襲ってきました。

 

そういういろいろな時期を通り過ぎて、今はお金を稼ぐ、ためるということを考えなくなりました。お金のことを考えなくなったわけではありません。むしろ、お金について、お金を取り巻く構造について、これからお金との付き合い方について、しょっちゅう考えるようになりました。

 

わたしが今、気をつけていることと言えば、お金は貯めるのではなく回していくものという考え方を、実践を通して自分のものにすることです。お金の「貯められる」という性質によって、たくさん持っている人、ほとんど持っていない人の格差ができました。その格差は大きくなるばかりです。お金を貯めておかないと将来大変だぞという不安をかきたてる要素にもなっています。

 

お金に限らずですが、不安で人を煽る行為がわたしは嫌いです。ある種の洗脳のように、思い込まされ踊らされるけど、実際はそうではなかったりすることがとても多いと思います。状況をよく見て、自分で考えて判断することが大事だなあと思います。

 

動植物はお金を持っていないけど生きています。ホモサピエンス20万年の歴史(農耕牧畜が始まってからなら1万年)の中で、貨幣制度が普及したのは、日本で言うならせいぜい江戸時代(約400年前)から。それまでは物々交換で人々は暮らしていて、お金ありきの世界って実はこの数百年のことです。そんなことを思うにつけても、お金が介在しない社会は存在しうるとわかります。

 

月ヶ瀬のような山間部での暮らしは今も物々交換が多いです。道づくり(地域全体で一斉にやる草刈りや道整備)や、日ごろの田畑の草刈りにいちいちお金は介在しません。道づくりに関しては、出れないときは出不足金として3000円納めないといけないとか、出れば刈払機(草刈機)の替刃を1枚もらえたり、ということはあります。

 

普段の草刈りは、世話している土地に関してそれぞれが責任をもって自主的に整備しているだけです。当たり前ですけど、草刈りをしたからって誰かがお金をくれるわけではありません。

 

でも、自分のためだけの草刈りかと言うとそれだけでもないとわたしは思います。田舎で暮らす人たちが全員一斉に草刈りをしなくなったら、自分たちも暮らしにくくなるけど、都会の人にも影響はきっとあるでしょう。休日に田舎にリフレッシュしに来ても、草ぼうぼうで殺伐とした景色ばかりだったら、目にするのが耕作放棄された田畑ばかりだったら、リフレッシュどころか悲しい気持ちになったり不安にかられたりするでしょう。

 

田んぼを維持する、すなわち米作りをすることに関してはもっと重要な機能があります。田んぼに水をためておくことで、大雨が降っても一気に都市部に水が流れて行くことを防ぐ、貯水機能(小さなダム)です。

 

そんな風に、田舎の人の暮らしは決して自分たちだけのためではありません。そこに貨幣は介在しないしたくさんの時間を費やさねばならないけど、大きな意味では日本という国、そこに住む人たちを守っていると、わたしは思います。

 

 

ぐるっと回って半農半整体。そして昨日のような丸一日施術している日の、帰路の自分の気持ち。施術によって、来ていただく方の体をゆるんだ状態にすることは、もちろんわたしがしたいことです。施術をしながら、自分は本当にこの営み(手技)が好きなんだなあと感じます。と同時に、来てくださった方との語らいがすごく楽しいです。互いを知ることで、物や事の交換も自然に生まれます。

 

昨日は行きより帰りの方が荷物が増えました(笑)。わたしも持って行ったものがあったけれど、お客さまも持ってきてくださっていた。最後はakippa(駐車場予約サービス)で借りた駐車場のオーナーさん(たぶん)が、見ず知らずのわたしに「今採ったこの木のレモン、よければ食べて」とレモンを3個くださいました。

 

お金を貯めることから離れて、物々交換、サービス交換、あるいは、あげる、回すということを意識するようになったら、自分の周囲でのモノコトの循環が前よりも多くなりました。受け取ってもらえる喜び、回っていく喜びってこんなにすごいものなんだと実感しています。

 

整体という手技をきっかけに、人とのつながりが生まれ、育っていくことが何よりうれしくありがたいです。整体をした日の帰り道がいつも幸せなのは、まさにこのことが実現されていくからなのだろうと思います。